落語教室の稽古って何するの?ある社会人落語家の一日

アマチュア落語家の小竜治です。

「私は趣味で落語をやってます」

初対面の人にそう話すと、だいたい驚かれますね。

「何ですかそれ?」とか、「趣味は落語ってどういうことですか?」とか。

そのたびに、「実は落語教室に通ってまして、三ヶ月で一席覚えて、最後は発表会があって人前でネタを披露するんですよ〜」みたいなことを説明しているわけですが、そうすると今度は「え!?落語教室なんてあるんですか?」という流れになりがちです。

それに続けて、「お稽古って何やるんですか?」となります。

世間一般的には、それだけ社会人落語家というのは物珍しい存在のようです。

そこで今回は、そんな変わった目で見られがちな社会人落語家が、落語教室の稽古日にどんなことをしているのか、ご紹介してみようと思います。

ある社会人落語家の稽古日の過ごし方

5:00 起床後、出勤するまで

朝5時に起きた小竜治は、ピリピリしていた。

今日は「ろくろ首」の3回目の稽古日。

1回目、2回目の稽古では、ネタの途中までしかできなかった。

「ろくろ首」の稽古開始から一ヶ月が経つのに、台本が完成していなかったのだ。

これではさすがにマズイということで、2回目の稽古が終わってから、なんとか台本を完成させた。通常、「ろくろ首」は20分程度でやるネタだが、それを15分でやることに挑戦した自分を責めながらも。

前日の夜、寝る前に軽く練習し、何とか最後までネタを覚えられた。

しかし油断はできない。

トイレにいる時間も、シャワーを浴びている時間も、歯磨きしている時間も、とにかくネタを口ずさむ。少しでも多く、口になじませるために。

移動時は、前回の稽古を録音した音源を聞きながら移動するのが日課だ。

自分のネタ部分だけでなく、師匠からのアドバイスも録音しているから、何度も何度も聞き返す。まとまった時間がとりにくい社会人落語家にとって、こういった細かな積み重ねが大事だ。過去の稽古の音源を聞くことは、いいイメージトレーニングになる。

9:00 職場でもこっそり練習

職場に着いてからは、始業時間までスマホでネタを読む。読む。読む。

台本をevernoteに保存しておけば、スマホでも編集・閲覧できるから便利だ。

就業時間中にトイレに行くとき、個室が空いてれば個室に入って、ネタをさらう。

昼休みに入り、昼ごはんを食べたあとは、またスマホでネタの確認。

イメージトレーニングに励む。

そして、小三治師匠の「ろくろ首」を子守唄に、15分ほど昼寝。

午後に入ってからも、トイレに行くときはネタをさらいながら歩く。

個室が空いてれば個室に入り、口パクで練習する。

一時間に一回くらいのペースでトイレに行くので、その度に上記のことを繰り返す。

稽古の日は基本、残業しないことにしている。

18時くらいには職場を出て落語教室へと向かう。

18:00 落語教室へ移動

職場から落語教室まで移動する時間は、もちろん前回の稽古の音源を聞きながら移動する。これもいつものこと。

師匠の前回のアドバイスを思い出しながら、またイメージトレーニング。

最寄駅から新宿駅まで山手線に乗って行き、新宿三丁目のC7出口から会場へ向かう。

落語教室のドアを開けると、稽古中ではないようだった。

どうやら、前の人の稽古が終わり、次の受講生が来るのを待っていたようだ。

19:00 稽古本番:師匠の前でネタをやる

師匠とスタッフさんに挨拶をし、急いで着物に着替える。

着替え終わると、順番待ちもなく、すぐに稽古が始まった。

いつものように録音の準備をして、講座に上がる。ちなみに私はいつも、ipodと化したiphone4sのボイスメモで録音している。

座布団に座り、「よろしくお願いします」と挨拶してからマクラを話し始める。

本編に入り、まずはおじさんと与太郎のやりとり。

前回までの稽古とは違い、ちゃんと暗記できていたのでスラスラやれた。

続いておじさんと与太郎が挨拶の練習をする場面。

ここも前回の稽古よりうまくできた。

そして最後、おじさんと与太郎がお屋敷に行くところからサゲまで。

ここからは初めて師匠にみてもらう。

途中セリフが飛ぶ場面もあったが、なんとかサゲまでやり終えた。

ネタ時間は14分35秒。

19:15 稽古本番:師匠からアドバイスをいただく

まずは一言、「全体的によかったと思います」とのお言葉をいただき、ほっと一安心。

ただし、これで終わりではなく、ここから師匠からの講評が始まる。

詳しくは書かないが、ざっとまとめるとこんな感じ。

  • おじさんの感情表現が足りない
  • 「ばあやさん」のイントネーションが違う、江戸訛り
  • おじさんと与太郎のやりとり、緊張と緩和でメロディをつける
  • 怪談調子はただ声を低くするだけでは足りず、凄みが必要、ドスをきかせる
  • 与太郎のセリフ「伸びろや伸びろ」ももっと明るく、何なら手拍子をつけてもいい
  • 鞠のひもを引っ張る手つきと強さを表現
  • お屋敷のばあやさん、もっと微笑んで、物腰柔らか、上品な感じを表現
  • おじさん、与太郎から「あとはなかなか」と言われてもっと慌てる
  • おじさんのしゃべり、もう少し年をとった、貫禄があるといい
  • 与太郎が寝てるとき、もう少し前傾姿勢でもok
  • 伸びる首、目でずーっと追う
  • 最後、与太郎もっと怯えて、怖がって、パニックになる

全体的なことから細かいことまで、たくさんアドバイスをいただく。

時間にして約15分。ネタ時間と合わせてみっちり30分。

以上で今日の稽古は終了。

19:30 稽古終了、帰宅

稽古が終わり、着替える。

着替え終わると次の人の稽古が始まっていたので、ネタだけ見て帰ることにした。

会場を出ると、録音したばかりの稽古の音源を聞きながら帰路につく。

再来週の稽古日まで、この音源を何回も繰り返し聞くことになるのだろう。

落語の練習は楽しい

以上、落語教室の稽古風景と社会人落語家の日常をご紹介しました。

落語の練習は普段と全く違う頭を使うので、けっこう楽しいですよ。

まあ、練習不足でネタが仕上がってなかったりすると、稽古日が憂鬱なときもありますけどね。

落語教室の稽古風景について、何かしら参考になれば幸いです。